山都町役場 藤原様
山都町は、「九州のへそ」に位置する山と川の景色が美しい町。蘇陽峡や通潤橋などの有名な観光資源をはじめ、歴史と文化を感じさせる石橋のある風景、地域が長年守ってきた文楽など、たくさんの魅力がある町です。一方で、日本中のあらゆる地域と同じように、少子高齢化や人口減少、地域の商店の減少や学校の閉校などの課題にも直面しています。
フミダスでは2015年の夏より、地域シゴト留学として山都町でのインターンシップを行っています。仕事の内容は、通潤橋に程近い浜町商店街への観光誘客と、こだわりの米づくりを行う菅地区での米のブランド化。受け入れにあたっては、山都町役場、菅地区の方々、株式会社まちづくりやべ等、山都町の多くの方々のご協力を頂いています。今回は、そんな山都町での地域シゴト留学について、山都町役場の藤原様にお話を伺いました。
途中からは座談会のように話が盛り上がった今回のインタビューは、フミダスの濱本と林、そしてインターン生の安野が同席させていただきました。
●地域づくりの先進地では、インターン生が活躍していた
林:はじめに、インターンを受け入れることになったきっかけや動機をお願いいたします。
藤原さん:昨年、高知県の四万十町に研修に行きまして、四万十町の道の駅でインターン生が働いている様子を目にしたんです。他にも、四万十町には「いなかパイプ」という田舎と都会をつなげる事業を行う団体がありまして、廃校を活用したシェアオフィスを拠点にされています。そちらでインターン生も受け入れていて、ちょうど夏休みの期間中だったこともあり、色々な活動をされている様子を直接見ることができました。そして、山都町にもぜひインターンを入れたいと考えるようになりました。その話をたまたま熊本県立大学の先生にしたところフミダスの話を聞いて、ちょっとお話を伺ってみたいと役場に来ていただいたのがきっかけです。
濱本:藤原さんにはインターン生の様子を見ていただくために、フミダスの修了報告会にも来ていただきました。
藤原さん:インターンの学生に町に入っていただいて、町を元気づけるようなことをしてもらいたいなというのがありました。
林:インターンが入ることへの期待や、受け入れるにあたっての地域での課題などはありましたか?
藤原さん:具体的にあったというより、実際に入って活動してみてもらわないと、なかなか分からないかなと思っていました。すると浜町商店街では、学生が来たらなぜか商店主の方たちがすんなり受け入れてくれたということがありました。若い人にしか出来ないパワーがあるんだなぁということは、受け入れを担当した株式会社まちづくりやべの方も仰っていて。大人同士だとなんとなく壁を作ってしまうところがあるけれど、学生だと受け入れてくれる。そういう、まちづくりにプラスになる部分が学生にはあるんだなというのも、受け入れてみてはじめて見えてきたところです。そして、そんな学生を実際にサポートしてくれる、今回はまちづくりやべの兼瀬さんなど、受け入れ側の存在が重要で、そういった存在が地域にどれだけいるかが課題でもあるということが見えてきました。
●若者の存在が、地域に元気を届けた
林:今のお話とも重なるかもしれませんが、インターンを受け入れてみて良かった点などを伺えますでしょうか?今回は、それぞれの企業の中で観光のマップを制作したりですとか、彼女たちの作ったブログが多くの閲覧数を獲得したりですとか、そういった成果も一つにはあったと思うのですが、たとえば地域に対する二次的な効果など、もしあれば伺ってみたいです。
藤原さん:ちょうど八朔祭り(田の神に感謝し収穫の目安を立てる日とされる旧暦8月1日の「八朔」の日に、豊年祈願と商売繁盛を願うお祭り。通潤橋に近い浜町商店街一帯で毎年開催される)の頃に入っていただいて、インターン生達にもいろいろ参加してもらいました。今は八朔祭りをやるにしても、各商店街は高齢化してしまって、造り物(野山に自生する竹やススキ、シュロの皮などを使い、神々の姿などをリアルな迫力でつくったもの)にも人手が足らないような状態で。ですから若い人がああやって踊りにも参加してくれる、神輿にも参加してくれるというのは、それだけ地域に活力が届いているのかなと思います。地域の方たちは、そういう部分で元気づけられたところもあると思います。
林:ありがとうございます。つづいて、たとえば大学の授業の一環としてこういう活動に入っていくことと、フミダスのような形でインターンシップとして入ること、受け入れる側として違いはありますか?
藤原さん:インターンは、学校とか大学とか関係なしに、自由にできるのかもしれないですね。やっぱり授業の一環だとそんなに羽目を外せないのかなと(笑)。
安野:授業の一環だったら、なんでもこなせばいいかな、と単位を取るためになってしまうかもしれません。インターンだったから自分で考えたと感じています。
藤原さん:けっこう街中の飲み屋も回ったよね、お酒は飲んでいなくても(笑)。頻繁に家にお呼ばれしたり、地元の酒蔵の社長さんのお宅に招かれるとか、通常はないですから。
林:インターンだったからこそ、人と人との関係づくりが出来たのかもしれないですね。
藤原さん:歓迎会とか誕生会とかそういう集まりは、菅地区でも街の中でもありましたね(笑)。修了報告会の時に学生が感極まって泣く場面がありますけれど、ああいうのは授業では味わえない、インターンだから味わえることなのかなと思います。そこで仕事を教えてくれる人との深いつながりができて、役目を終えたという安心感ですとか。そういう意味では、学生にとって本当にいい経験ができるのだと思います。